岳沢BC〜前穂・西穂(個人山行)   2009.5.1-5/5   国土地理院の地図を表示   [戻る]

【5/1】夜9時半合庁出発──5/2午前3時半 平湯アカンダナ着


【5/2】上高地7:35──河童橋7:50──岳沢入口8:05──9:10 1750m9:15──9:50 1850m9:55──11:30岳沢BC

 29年ぶりの春の上高地。気温は3℃。天気良く、河童橋から眺められる雪をかぶった奥穂、前穂が雄大。

 3年前のナダレで流れてしまった岳沢の小屋跡まで、重荷は3時間のガマンと歩き始める。10張くらい張られている岳沢にテントを建てる。

 幕場からは西穂、奥穂、前穂が見える。乗鞍が美しく南西に見えた。水場は近くで流れている。鍋とビールで豪華な食事。今日はほとんど寝ていないので、6時半過ぎには寝る。

 ここは、トイレがない。人がテントの中に入る夕暮れ時とか、少し上の林の中で、傘を差しての用足し。各テントでは雪のブロックを積み目隠しを作っているようだった。


【5/3】岳沢BC4:45──奧明神沢出合5:00──二股2450m7:30──9:00 2600m9:30──11:00前穂高岳11:25──13:30岳沢BC

 3時起床のつもりが、リーダーが1時間間違えて、2時起床。明け方、降るような星空。

 ゆっくりご飯(昨日の鍋の残りを食べてからおじやにする)にして、ヘルメット、ハーネス、スパッツ、アイゼンを付けて、出発は4時45分となった。4時過ぎには明るくなった。

 奥明神沢に、もうすでに出かけたパーティーが2組くらい。私達も早く出たのに、1ピッチ歩いたらコーヒー沸かしてティータイム。そんなことを繰り返していたら、とうとうビリになった。

 川辺さん、久しぶりの山で、だいぶ前のプラスチックブーツを履き、足が各2kgと重たい。上部でも、二股に分かれる手前のとても不安定な所で、しかたなく休憩した。

 朝早くお会いした隣のテントのHさん(63歳)が沢を間違えて、右に行く所を『左にトラバース!』と声をかけた。下から見ると傾斜が緩く見えるが、実はとってもきつくって40度はあるだろう。感覚としては60度くらいに感じる。

 朝は雪の固まりが転がると重たくて、当たると痛いが、昼になって気温が上がると雪玉も軽くなる。朝、上を歩くものが落とした直径30センチの雪玉を私はかわせたが、川辺さんは動けなかったので、まともに手で受け青あざを掌につくっていた。これが岩だったらたいへんだ。

 川辺さん、これ以上行くともう歩けなくなると下りることになった。そこから、さっきのHさんに追いついて、頂上はもう少しだから一緒に行きましょうと声をかけて登る。

 頂上直下に急な雪壁があるが、短かったのでそこを抜けたら前穂高。途中、槍から縦走してくる単独のおっちゃんや、東海大学の若い2人とすれちがう。頂上には二人すでにいて、この狭い稜線上にテントが一張り。

 360℃の雪の峰々は感動だった。笠、薬師、奥穂そして槍、後立、剣だろうか真っ白で美しい。Hさんも登ってきて、自分の力量以上の山だとおっしゃる。

 ちょっと変わっていて、雪の時にしか来ないのだと言うのだが、経験は長いが余り無いような感じだった。そこで早田さんが、ザイルをHさんにつなぎ下降し始める。Hさんがザイルにつながってしまったからしょうがないと、私も気合いを入れて先頭を下る。

 相当な高度感!!一部急な所では"こわいよ!"となんとかおりた。早田さんは、この雪だったら絶対に滑らないからアイゼンを外した方がいいのだと言う。たしかに朝と違って雪が腐り、歩きやすそうだが、なにせ斜度40度。川辺さんと別れた付近でアイゼンを外してみた。

 朝、ここの下りはかなりきつくて恐ろしかったのが、ここまで下りてきたら高度に慣れていて少し余裕があった。それに早田さんが、「ほら!!」っと、急な雪面を軽やかに楽しくスキップ状態で下る。それを見て、少し張りつめていた気持ちが軽くなった。

 Hさんとも別れて、早田さんグリセード試みるが滑らない。だから大丈夫と、私も軽やかに足を前に出すと滑った。遙か昔に11月の富士山でした、滑落停止を試みてピッケルを突き刺すと止まった。この雪なら大丈夫。ざくざく雪だもの。2時間で川辺さんの待っているテント目指して下った。テントはますます増えて 30張りくらいあったろうか。

 さすが川辺さん!夕食の準備をしてくれていて、下ったらお茶を飲ませてくれる。さすが山屋!じっとしていないし口も止まることがない!

 帰ったら隣に阪大OB、その横に日大OB(還暦)さんのテントがあって、川辺さんはその方達とも話が弾んだようだ。川辺さんも実は阪大。でも、山岳部には入部しなかった。今頃悔やんでいる。

 今夜は、麻婆ナス。川辺さんの乾燥ニンニクを炒めていい香り。針金で網をつくり、昨日の残ったシイタケを焼いて酒のさかなに!冷えたビールで乾杯!!

 今夜も疲れたから、早々とシュラフにもぐる。いつのまにか寝入ってしまうが、隣の声で目が覚めたのが10時半。なんだともう一回寝るが寝付けない。すると、真ん中に寝ていた川辺さんが早くからごそごそしている。今日も、足が痛くなるからとテントキーパーを決めていたが・・・


【5/4】岳沢BC4:45──西穂沢下部5:10──5:50 2400m6:00──7:00 2570m7:10──8:05稜線コル8:15──8:40西穂高岳8:45──稜線コル9:10──11:15岳沢BC(昼食)12:45──14:20岳沢入口14:45──15:00上高地

 3時起床。川辺さん、ごそごそおきて朝食の準備をしてくださってました。昨日入れ忘れた豚肉をみそ汁に入れ、干し椎茸、切干大根も加わって豚汁となる。

 おじやと豚汁の豪華朝食。昨日の、奥明神沢から見た西穂沢があまりにも急だったので、気持ちがもう一つ乗らず気が進まなかった。とりあえず、取り付きまで行ってみることにして5時前に出発した。

 沢を二つ越えて西穂沢へ。紀州山の会の6名と一緒になる。彼らは間の岳まで足をのばすそうだ。稜線まで900m。まっすぐの雪の沢。斜度40度くらい。下から見ると傾斜は緩やかにみえるのだが、途中で後ろを振り向くと若干びびる。

 昨日の奥明神沢と一緒。ステップが切ってあるので、それを追っていくと楽に登れるが、10歩歩いて上を見る。それの繰り返し。しかし、300m1時間でぐんぐん高度を稼いでいる。こうなると頂上へ行こうと欲も出てきた。

 2回、デブリの上で小休止して稜線上に上がると、だいぶ先に登っていたパーティーと一緒になる。皆、ハーネスにはシュリンゲの固まりがいくつもぶら下がっている。西穂山荘から来る人たちもここで合流するので、西穂までの行き帰りは多少道を譲ったりして混み合った。

 夏道は一部残っていて、頂上直下は混む所を避け、誰も登っていない雪壁を、早田さんが切った跡をピッケルを刺しながら慎重に登った。

 西穂頂上。狭い場所。デジカメを忘れたので、携帯でたった1枚写真を撮ってもらった。下りはもっとも慎重に下りた。早田さんはこっちをキックステップしながら下りてこいと言うが、私は雪が固くて思うように蹴りこめないので、他の皆さんのステップに忠実に下った。

 稜線から下る時も、早田さんはこの雪の状態なら大丈夫だからアイゼンを外して歩いた方がよいと勧めてくれるが、上から下まで900mのこの傾斜ではとてもアイゼンを外す気にはなれない。やはりステップを忠実に下って行った。

 早田さんは、この急傾斜でグリセードを試みる。すこーし滑るが快適ではない様子。少し下に行っては私を待ってくれるのだが、一歩一歩歩く私を待つのは根気のいることと申し訳ない思いだった。 沢の真ん中に来た所でアイゼンを外してみる、が滑る。恐怖がどうしてもぬぐい去れず、動けなくなってしまった。もう一度アイゼンを着け、なんとか下った。

 昨日の奥明神沢ではアイゼンを外して半分下ったのに、どうしてこわくて下りれなくなったのだろう。西穂沢から昨日登った奥明神沢を見ると、やはりすごい傾斜だった。こんな所を登ろうだなんて、誰が初めて登ったのだろう。

 冬の間は雪崩の巣の沢も、春になると雪が落ち着いて、人を呼び寄せ惹きつける。ダイレクトに前穂や西穂に突き上げる魅力は、危険でも人を惹きつけてやまないのだろう。

 テントに戻ると、川辺さんがお茶を沸かして待っていてくれた。テントも撤収してきちんとしてくださっている。ありがとう。

 テント撤収し、昼ご飯も食べて、上高地に下る。雪がだいぶ溶けている。川辺さんは、屏風岩を見に横尾へ行くことにしたので、再会を約束して上高地で別れた。

 私達は、バスでアカンダナまで帰り、平湯は混んでいて入れないので神の湯に入った。露天のお湯はとてもよくいいのだが、シャワーがないので山を下りた者が使うには不適。でも3日ぶりのお風呂は気持ちが良かった。

 高山まで走る間に桜の花、落葉松の芽吹きなど美しさに感動した。今日は高山まで行って、豪華に飛騨牛の焼き肉を食べて駐車場で車中泊。駐車代も無料だったのでラッキー!

 仮眠している間に、唇がむくむくと腫れ上がってきた。近くのコンビニに顔を隠して氷を買いに行く。たらこ唇の腫れはひかない。しょうがないので同じコンビニに、また、マスクを買いに行き何とか人前に出ることができた。


【5/5】

 5日午前3時半に高山を出発し、徳島まで早田さん一人の運転で8時半に着いた。渋滞には巻き込まれない時間帯だったのでスムーズに帰ることができた。

 今回の山行では、早田さんを初め、川辺さん、天候、山々に感謝です。ありがとうございました。たくさんのものを得ることができ、充実した3日間でした。また、このような機会があれば皆さん是非参加してください。こんな機会は今しかない!と。(島)


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