向岳

1999.6.5


メンバー:小林(L)、西條、滝、内藤、大西

 毎年初夏になるとこの花の噂を聞く。那賀奥の蛇紋岩地帯にだけ咲くジンリョウユリ。昭和12年、神山町神領で発見されたため、この名が付いた。ササユリをひとまわり小さくした、可憐な花だ。その花に今年やっと出会うことができた。

 まず私たちは、木沢村出羽の農村レストラン周辺の群生地を訪れた。レストランの裏が遊歩道となっており、道沿いにピンク色の濃淡の百合たちが競いあって咲いていた。写真で見るより実物の方がずっと愛らしい。周りを圧するような芳香を放つと聞いていたが、顔を近づければほのかに香るといった程度だ。でも慎ましやかなこの花には、ふさわしい香りだ。

 ついで向岳に登るべく、出羽と当山集落を結ぶコサデ峠に向かった。薄幸の乙女を弔った、2体の地蔵尊のあるコサデ峠は、現在は林道が通り、明るく眺望に恵まれた地となっている。斜面のそこかしこで、ジンリョウユリが風に揺れている。向岳は信義峠から竜峠をつなぐ稜線から望むと、大美谷ダムの側に三角錐の姿を見せている山だ。北側は、絶壁となってダムに落ちている。この辺りはアスナロの木が群生し、わが山の会にとっては縁を感じる所だ。

 とんがりの頂点を極めた後コサデ峠で、内藤さんが用意してくれたてんぷらを肴にビールでジンリョウユリの花見の宴となる。心地よい風に吹かれながら、可憐な花を眺めていると、日頃の疲れが一挙にとれて、身も心も軽くなった気がした。 小林

木沢の地図
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