山はどの季節に登っても、その季節の良さを感じさせてくれる。でも、食べ物に旬があるように、山にも旬の時がある。栗枝渡から登る寒峰は、福寿草の咲く3月末がその時だ。
足の踏み場もないほどに咲く福寿草の群落は見事であり、多くの登山者で賑わっていた。日差しを浴びて、キラキラと輝くその花びらは、春の光を発散させているようにみえる。
しかし、この山のチャームポイントは、この福寿草の群生地だけではない。ここから先、展望が良くリョウブなどの木々も美しい。尾根道が素晴らしいのだ。
特に山頂手前のコルの辺り。堂々としたブナの大木が周りを取り囲み、窪地のようになっている。大木達は、その内側になみなみと生命力をみなぎらせ、静かに芽吹く時を待っている。この山の命が感じられる所だ。この日は前日の冷え込みで、樹氷が木々を覆い、白い花が咲いたように見えた。
中腹で春の花、稜線で氷の花と二つの花が楽しめるのも、3月末のこの時ならではのもの。大満足の一日だった。 小林