(県連リレー縦走E区間)山行時間 5時間45分
この尾根は、時折でくわす不意打ちの風景を与えてくれる自然林が多いことは百も承知していたが、路の存在は夢にも現れてこなかった。
これは気紛れに山登りを趣味とする気難しい人種が、林業をなりわいにして暮らす純粋な人々に受けている最大の恩恵とみて差し支えない。
そもそも路の有る無しで、たかが知れた我々の実力など変幻自在に揺すぶられてしまうといってよいのだから。
一帯には、肉淵周辺に匹敵するほど豊かな広葉樹が秘められていたし、これでもかという迫力のある構図で勝浦三山を望むこともかなった。
曇りがちで始まった空模様は、土須峠ぺ到達した頃には、夏より高い晩秋初冬の青空に変わり、凛と冴えた無限の空間に悠々と白い浮雲を漂わせていた。
全コース中、最長ゆえ歩きがいがある反面、情報が皆無で深く心配された行程でもあったが、実際には予定よりも早く、リレー縦走のアンカーを務めることができたのであった。
高校時代、同コースの逆縦走を試み時間切れで断念したことがあったから、今回雪辱を果たすことができて大変嬉しく思っている。まるで喉に引かかっていた魚の骨が取れたような爽やかな気持ちと言ってよい。
これでまた未知の領域が1つ過去のものとなり、早くも次に歩いておかなければならない個所に思いは巡っている。そしてできるなら、そこは白い冬将軍のしわざによって眠らされた静かな山々の懐であることを願う。(尾野)