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平家平(1603.5m)

1993.3.21


半信半疑に登りつめた小尾根の終点で、先人を偲ばせる色あせた赤テープを発見した時の嬉しさは一入だった。

主稜線に乗ったおかげで、頼りきれなかった自信はゆるがぬ不動の確信に変わり、これで勝算あり、とふんだ。

容赦なく猛り狂う北風と、行く手を阻む凍りついた笹も既に敵ではなかった。指呼の間から招きよせる綿帽子付きの天辺や、晴天に映える気紛れの芸術品とでも呼ぼうブナの巨木に咲く冬の樹花が励ましてくれたからである。

一歩一歩、憧れの絶天へ近づく度に胸は高鳴り、漸くそこより上がない所へ来た時、例えようのない歓喜と山を続けていてよかったという至福の念が心に染み渡った。

帰途迷ってしまい、3人の山和撫子を不安がらせた事が唯一の反省かつ心痛であるが、平家平も決して登れぬ山でないと判りホッとした。一見は百聞に優るといえようか。

ともかく、悲喜こもごもの豊かな11時間は無事終わった。ありがとう蛇石(神社)さん。そして万歳。(尾野)