ドメスティックバイオレンス
ドメスティックバイオレンスとは、家庭内での、夫や恋人からによる女性への暴力のことです。
もともと夫婦間のことは私的な問題として扱う風潮や、夫婦間の経済的な力関係、世間体などの壁に阻まれ表面化することはあまりありませんでした。しかし1992年に実態調査が行われ、約8割が身体的、心理的、性的暴力のいずれかを受けたことがあり、3つとも受けたとする人が約5割もありました。加害者の男性はあらゆる職種にわたっており、地位、学歴などには無関係に起っています。
さらに、夫の妻への暴力は「家庭内の問題」と軽視され、いくら妻が夫の暴力を警察に訴えても、「夫婦間の問題に法は介入しない」という原則から問題にされないことが多くありました。また恋人同士の場合でもプライベートな問題として処理されがちでした。しかし、このような社会的状況の中で繰返し暴力を受けることで、精神的、肉体的に傷を負う女性が年々増えているのも事実です。
ドメスティックバイオレンスは女性への人権侵害です。国内の取組としても「男女共同参画2000年プラン」の中で「女性に対するあらゆる暴力の根絶」が重点目標にあげられています。社会的、経済的、肉体的に優位に立つ男性が、弱い立場にある女性をさまざまな暴力で支配しようとする行為は、「夫婦げんか」などの個人的事情、個別的問題の範囲を越え、女性の人権を侵害する明らかな犯罪です。
ドメスティックバイオレンスには次の様な種類があります。
- 身体的暴力
- 心理的暴力
- 性的暴力
- 子供を利用した暴力
通常暴力を受けると、その場で問題になり法的に解決されます。しかし、ドメスティックバイオレンスの特徴として、女性が繰り返し暴力を受けているのも関わらず、その状況を続けようとすることにあります。その理由として、次の様な事情が挙げられます。
- 経済的依存
- 親、妻としての責任感、罪悪感
- 家庭生活をうまく進められないのは、自分の責任との思い
- 子どもに対して、家庭を壊してはならないという思い
- 自立への不安
- 根拠のない楽観主義
- 暴力は一時的なもので、正常ではない状況で起きているという思い込み(暴力の病にかかっているのを認めたくない思い)
- 状況がよくなる証拠はどこにもないのに、よくなるという思い込み(彼が変わってくれると信じる思い、あるいは思い込み)
- 人格の問題なので暴力は直らないのに、自分が直せるとの思い込み
- 救世主コンプレックス
- 自分がいなければ、彼は救えないという思い込み
- 彼が変わるのを、自分が助けなければという思い
- 周囲への体面、屈辱感
- 絶望感、あきらめ、否定
- 男はみな暴力をふるうものだという思い込み
- 自分が受けている暴力は、大したことはなく、他の人はもっとひどい暴力を受けているという思い
- 周囲の人が虐待を受けていることを信じてくれない
- 報復への恐怖
- 家を出ようとしたら、もっとひどい暴力を受けるのではという恐怖
- 支援の欠除、孤立感
- 家族や諸機関からの支援が得られず、孤立しているという思い
- 愛情、執着
- 愛された記憶や、暴力をふるわない時の彼の優しさへの執着
- マイナスの心理的ニーズ、思い込み
- 暴力をふるわれることで、自分自身の存在価値を確認し、満たす心理
- 表面的にはパートナーが暴力をふるうのだが、無意識では「自分が暴力をふるわせているという支配感」が満たされている心理(愛情と暴力が一対になって、愛情と暴力を切り離せない。愛情の側面だけを見て暴力を肯定してしまう)
- 自分自身の攻撃性、暴力を全部パートナーにかぶせることができ、自分は無垢な犠牲者でいられる心理
被害者だけでは、夫や恋人の暴力から逃れることができません。また、自分自身が人権侵害を受けているのだと気付いていない人も多く、ましてや加害者が人権侵害を行っているという意識は皆無でしょう。
もしもこれを読んでいるあなた自身が被害者となっていなくても、その状況に陥っているのではないかという人がいたら、被害が深刻になる前にドメスティックバイオレンスという事実があることを助言してあげましょう。
解決方法は1つではありませんが、被害者には「シェルター」が必要です。周りに適当なシェルターがないなら、このホームページの「バーチャルカウンセリング」なども、1つの選択肢としてください。
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