森 林


 森林の機能には、水源涵養、土壌保全、生物多様性保全、木材生産、保健休養などがあります。その中でも、ダム問題などとの対比で最も注目されているのは水源涵養です。

 森林には非常に大きな保水能力があります。水源部の森林の保全により森林自体が巨大なダムとなります。貯えた水は自浄作用も大きく、恒久的に水を保ち、美しい水質を維持してくれます。しかし、森林自体もまた、たくさんの水を消費しています。

 雨量の約1/4は葉や枝で受けとめられそのまま蒸発してしまいます。また、光合成のために地中から吸い上げられ蒸散してしまう水の量は、全体の約1/4にも当たります。結局、川へ流れだすのは降水量の約半分でしかありません。この点は忘れられがちです。

 それでも森林の水源涵養機能は、お金を掛けないでその機能が発揮されるところに長所があります。ただし、人工林の場合は、間伐など森林の手入れをしないと、こういう機能は果たしません。

 だから、森林土壌の流出量の平準化(一度に降った雨を土壌に浸透させ、徐々に流出させることにより、河川流量を均一化させる)こそは、水源涵養の本質とも考えられています。

 では、本来の森林が持つ水源涵養機能がフルに発揮できるような太古の森を創世できれば、ダム問題は解決するかというとそうではありません。それ以上に人間は水をほしがるからです。特に21世紀になり人口が増えつづけると、水不足が深刻になり、水が金に変わります。

 そうなると、約半分を蒸発させる森林は伐採して石やコンクリートで山を固め、地下に貯水するようになります。降雨を全て利用しようとすると、こういう方法にならざるを得ないでしょう。そうなる前に水を大切にする習慣、特に使用量を減らすための努力は、企業/行政任せにせず1つ1つの家庭で実践しましょう。


 話を戻して日本の森林について考えると、問題点は「山づくり」の方向性の誤りによってもたらされています。つまり人為的な問題なのです。森林は木材を供給するばかりでなく、国土の保全、水資源の涵養に大きな役割を果たしています。そして、生態系の源としての水源を維持していくためには、千年先を考えた新しい森林づくりが必要です。

 現在の職場としての森林環境の問題には、

  1. 2次、3次産業の発展に伴って、基幹産業としての林業の地位が相対的に低下したこと
  2. 厳しい地形的条件等から魅力ある就業の場としての条件整備が立ち後れたこと
  3. 過剰なまでの一斉造林により、暗い森林が形成され、森林環境としての快適性が損なわれ、山への関心、愛着が薄れたこと
などがあげられます。

 また現状の杉林に特化した森林形態は、本来の森林の働きから見ると著しく偏ったものとなっており、災害の発生の危険性に加えて、破局的な森林崩壊の危険性も潜在しています。従って森林環境の再生を図るためには、持続可能な林業構造の構築と合わせて、森林形態(林相)の改善を有機的に連動させていくことが不可欠です。そして、それが用材林としての森林の資産価値を高めていく方向へ向かいます。

 新しい森林づくりのためには次のような視点が必要です。
  1. 「量」から「質」への転換
     短期皆伐方式の”いそがしい”林業から、長伐期・大径木方式等の”ゆとりをもってじっくり育てる”林業へ転換するとともに、それにふさわしい技術体系を探求していく。

  2. 用材林から多様な樹林への転換
     森林の目的を用材林生産だけに固定せず、森林としての働きや可能性を幅広くとらえ、里山的な持続可能な賢い利用などを見直し、森林を利・活用の場としてその目的を拡大し、自然的・経済的・社会的意義を高めていく。つまり、多様な美しい生き生きした森林づくりをはかる。

  3. 森づくりの輪と視野の拡大  県民が環境問題を自分自身の問題としてとらえ、付加価値型林業や多様な森づくりを進めるために、人・物・金・情報・技術の面で内外との連携・協力の輪を形成し、広げながら広域的な森林づくり体制を整備していくこと。
 自然林は大気を浄化し、水を養い、肥沃な土地を育てます。生物はその恩恵のもとに生存し、人間もまた、その恵みの上に今日の繁栄を築いてきました。ところが過剰なまでの杉、桧の一斉造林により、暗い森林が形成され、森林環境としての快適性が損なわれ、森林の働きからみると著しく偏ったものとなって、水や土が危機的状況にあります。

 例えば日本国内には、わずかしか自然植生は残されていません。植林地や農用地はその利用の仕方により環境にとって有害となったり、逆に保水機能を発揮したり、生物の多様な生育・生息場所の確保につながるなど有益になることから、いわゆる「賢明な利用」が必要です。

 この現状を理解し、人々が集い、喜び、森の生き物たちもやってくる森を創造していけるよう、もっと声を上げましょう。

自然状態に戻りつつある場所。これが森林に戻るためには200〜300年かかる(徳島市勝浦川)
自然に戻りつつある写真

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