気候変動の緩和と適応


1日の最高気温がセ氏35度を超える「猛暑日」の定義は、2007年4月に気象庁によって新設されました。2010年の夏も、2011年の夏も、その猛暑日の連続でした。暑さで有名な特定の都市だけではなく、北から南まで、日本全国の広い地域で猛暑日が記録されました。

また、9月に入ってまでも熱中症の被害が連日のように報じられ、ついに気象庁は2011年から「高温注意情報」という新しい気象情報を出すようになりました。

そうして、多くの人が「地球温暖化」の影響を実感できました。異常気象はもはや一過性の異変として片付けられない、異常ではない気象となりつつあります。

猛暑は、記録的豪雨や突風なども含め、地球温暖化の影響として予測されていた事象そのものです。世界に目を向けても、洪水、干ばつ、台風と、異常気象による自然災害は、枚挙にいとまがないほど発生しています。

米国民の環境意識は、ハリケーンカトリーナの襲来によって大きく変わったといわれていますが、2011年も続いた暑い夏と頻発する異常な気象現象は、私たち日本人の環境意識を大きく変えました。

そろそろ「地球温暖化」という、どことなくおだやかなニュアンスの漂う言葉に代えて、国際的に使われている「気候変動」を使うべきです。私たちが直面しているのは、まさに激しい「気候」の「変動」であり、人命をも脅かす「気候リスク」あるいは「気候の危機」とも認識すべき事態です。

これまで、人々の関心は温暖化の「防止」に向いていました。しかし、もはや現実となった温暖化の「影響への対処」を真剣に考え、対応を急がなければなりません。

以前から、温暖化を抑制する「緩和」策だけでなく、温暖化の影響に適切に対処する「適応」策が必要で、両者をバランスよく進める必要かおる、と言われてきました。しかし、「緩和」策が十分な効果をあげずにいるうちに、注目度の低かった「適応」策の必要性がいよいよクローズアップされて来る事態となりました。

国際規格IS026000の環境セクションでも、適応の重要性を強調することになり、タイトルも「気候変動の緩和と気候変動への適応」と、両者を同じ重みで並記し、なじみの薄い「適応」については、その具体策を囲み記事で例示・解説しています。

例えば土地利用や都市計画における配慮、飲料水の確保など干ばつへの対策、農業・医療など様々な分野での技術開発、さらに適応の重要性について、意識を高める教育啓発も重要な適応策です。温暖化ガスの排出削減という、一律で単純明快な緩和策に比べ、適応策は、地域ごとに生じる影響と必要な対策が異なり、広い分野に及ぶきめ細かい対応が至る所で必要となります。

従って政府主導のトップダウンの対策だけでなく、地域づくりのように市民参加や様々なセクターの参加・協力が必要です。

企業も課題解決のため、浄水技術を使った途上国での水不足問題の解決や、農村部での干ばつ保険などを考えなくてはなりません。

こうした事例にヒントを得て、気候変動への適応に、自らのリスク管理としてはもちろん、ビジネスチャンスとしても取り組んでいく企業を急いで増やしていく必要があります。

先進国、途上国を問わず、対策は早ければ早いほど効果は大きく、コストは小さくなります。

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