下水処理


 下水は家庭や工場から出てきます。工場からの排水は公害病などの悲惨な経験を経て、ほぼ浄化されるようになりました。しかし、家庭の台所、風呂場、洗面所、トイレから出てくる下水にはまだまだ垂れ流しもあります。さらに家庭からの下水の処理方法には、浄化槽、集落下水道、下水処理施設という3つの方法があり、それぞれ厚生省、農林水産省、建設省がバラバラに管理して統一されていません。

 浄化槽は各家庭で設置するものですが、これさえ設置されていない家庭もあります。設置はされているものの、合併浄化槽ではなく単独浄化槽しか設置されていなくて、トイレからの排水しか浄化されていない家庭もあります。つまり、台所、風呂場、洗面所からの排水が垂れ流しとなっていることに気付いていない人が、たくさんいます。

 下水の処理については、処理場の建設が唯一無二の手段であるかのように謳われ、それも流域下水道のように大規模施設ほど効率的であると考えられています。一般的にもこの下水道神話は信じられ、下水道普及率が問題になったりします。しかし、全国各地で計画された下水処理施設の建設はなかなか進まず、完成した施設からも数々の問題点が指摘されています。

 下水処理場は、水のリサイクルを考えた場合

  1. 一般の流域下水道のように工場排水を受け入れると重金属類の除去が難しいことから農業用水への利用は困難となる
  2. 下水処理の対象が広範囲かつ多岐にわたるため、処理水の安全性が問題である
  3. 大量の処理水を再利用するためには新たな送水用配管を必要とし不合理である
  4. 水の循環を生活から遠ざけることにより、水の使い捨て感覚を助長し、浪費につながる
 自然環境への影響を考えた場合
  1. 下水管による送水のため河川に水が戻らず、河川の水量が減少する
  2. 大量の処理水を特定箇所に放流することにより富栄養化を生じさせる
  3. 汚泥利用や処分が容易でない
 さらに、流域下水道等の大規模な公共下水処理施設はコスト面での自治体への負担が大きい事も考えあわせると、大規模施設より地域条件に応じた処理施設や方法を選択すべきです。

 具体的には、都市部では従来の公共下水道が、人口密度の低い地域では合併浄化槽の方が有利であり、その中間の集落では、集落下水道が適していると考えられます。

 下水処理の方法は年々進歩しているが、基本的には微生物の働きに頼っており、自然の水循環の一部であると考えるべきです。そう考えたとき、発生源の近くで、時間をかけ、機械に頼らず自然の作用を有効利用するという原則が成り立ちます。

 例えば毛管式土壌浄化法という、水を涵養し下水道を不要にする下水の浄化方法もあります。土壌を使った従来の方法は、汚水を土壌の表面に流すとか、あるいは土中に引き入れ垂直方向に浸透させる形が多いのですが、いずれも目詰まりしやすいという間題がありました。

 毛管式土壌浄化法は目詰まり間題を次のようなメカエズムで解決しようとしたものです。すなわち、水は土のなかでも毛細管現象を起こして、下から上に上がることも、横に広がることもできるという原理を利用して、重力によって下層の方に汚水が行けないように不透膜を置いてやり、土壌表面浄化方式のように土の上から流すのではなく、水を土の中へ入れるしくみを促すのです。

 そのために土中に素焼きの陶管を埋め、陶管から浸み出てくる汚水を毛細管現象によって四方に広げつつ、後で浄化された水だけが垂直に下へ流れることを許すという原理を構造的に造りだします。

 具体的には、地下60センチの溝の底に不透性膜をおき、その上に荒砂、次に砂利または小さな礫、その砂礫の間に陶管を置き、礫の上層に山型に網もしくは布、その上に畑からとった有機物の豊富な土壌を埋め戻します。陶管の位置は、この装置の垂直寸法のちようど真中の水準、すなわち30センチあたりに置きます。こうして水の毛細管現象を利用して、土壌の粒子の間にある酸素によって微生物を働かせ、浄化しつつ水をできるだけ広範囲に拡散させて、土壌の水吸収力を高めてやるのです。

 この方法には次のような効用があります。
  1. 悪臭対策
     臭気をもつイオンは土中の微粒のイオンと結合して、土壌に吸着される。

  2. チッソ・リンの除去
     特にリンの除去率は極めて良い。脱リンのメカニズムは、土壌中の括性アルミニウムや鉄のイオンが汚水に含まれるリン酸イオンと化合して吸着される。

  3. 汚泥処理の簡易性
     活性汚泥法では、大量汚泥の処理にコスト(投棄場所・運搬等)がかかる。土壌浄化法は汚泥が少量であり、汚泥を汚泥として取り除く必要がない。原水に重金属物質が入っていない限り、土壌の肥沃度は増し、植物の生長繁殖に役立つ。

  4. 大腸菌等の科学的・生物的処理
     括性汚泥法による下水処理のように洗剤の泡が飛んだり、大腸菌が飛散したりすることがない。

  5. 塩素殺菌の必栗性がない (環境基準湖沼A類型を満足する)
     活性汚泥法の場合、大腸菌を塩素殺菌する必要があるが、土壌浄化法の場合、大腸菌数が低いので塩素殺菌の必要性をなくしトリハロメタンといったガン性物質を形成する危険性も少ない。

  6. 地下水の涵養
     土壌浄化法は浄化された水自身が土を豊かにするため、地下水の涵養に最も適している。

  7. 汚水量の流量管理が不必要
     活性汚泥法では汚水流量が一定に保たれて効果が上がるが、土壌浄化法では土壌中の汚水量の管理が不必要である。かえって水位が下がることにより土壌中に酸素が供給され、微生物の活性、分解が活発に促進される。

  8. 気温管理が不必要(土中微生物の括動に変動が少ない)
     土中は概して大気よりも気温が一定なので、微生物の活動に大きな変動がない。

  9. 管理費の軽減(自然自身浄化)
     自然自身が浄化するため、高度な教育管理者や機械コントロールが不必要。

  10. 日常生活圏内の自然空間確保(土壌面積確保)
     土壌浄化法に必要な土地面積は、緑の空間として花壇や菜園、庭木など緑の潤いや涼しさの空間を与える。

     この毛管浸潤トレンチの長さは、一人一日排出する有機物と1立方メートル当りの土壌が有機物を分解する能力との関係で決まります。ふつう、一人につき2メートルのトレンチでよいと言われています。

    ライフスタイルアドバイス
    はじめに戻る