時事メッセージのページ 2000年後期

電磁波の影響
石器発掘のねつ造
有機農業
凶悪犯罪の背景
省エネ
今の環境問題とは
自殺者過去最高
味覚障害
新しい時代のマナー
地方分権


電磁波の影響(2000.11.23)

 携帯電話や高圧電線から発生している電磁波が、人体に悪影響を及ぼしていると言われています。携帯電話を使う人は脳腫瘍ができやすく、高圧電線に囲まれている地域はガンの発生率が高いという説です。

 実は、人体実験ができないことから、悪影響があるかどうかはまだわかっていません。しかし、ヨーロッパでは電気製品からの電磁波の漏れる量を規制しています。

 弱い電波は脳に吸収され、脳を暖めます。その脳の活性化が睡眠障害や子供の異常行動、さらには精子異常にまで影響しているという説もあります。

 しかし、一応電気製品はWHOの基準をクリアしていますし、高圧電線は100m異常離れていると影響はないというのが定説です。ひげ剃りはモータが顎のすぐ近くで動いていますが、影響はないということになっています。

 ところが、携帯電話はイヤホンを使ってアンテナ部分を頭から離すことができるようになっています。郵政省では脳腫瘍の発生との関連について調査を開始するそうです。

 果たして本当はどうでしょうか。もしかすると影響はあるのかもしれません。わからないことに対して私たちはどう対応すればよいでしょうか。今まで日本人は、わからないことに対しては、医者や行政、周囲の人たちの行動に従いました。そして、影響があるとわかった頃には”人体実験”は終わってしまっていました。

 それでは遅いということに気づき、自分で考えて行動するようにしなければいけません。自己責任の時代です。情報は世の中に満ちています。自分のことは自分で責任をとる。教えてくれなかった、知らなかったと訴える前に、アンテナを張り巡らし知識を求め、それに基づいて自分で判断しなければなりません。そのためのアンテナは人体に悪影響はありません。



石器発掘のねつ造(2000.11.12)

 東北旧石器文化研究所の副理事長だった藤村新一氏(50)による旧石器発掘のねつ造問題で、梶原洋・東北福祉大教授は「2つ以外は信念にかけて、やっていないと信じている」と話しています。また、同研究所鎌田理事長は「すべての発見が否定されたわけではない」と理解を求めました。

 周りのプレッシャーでこんなことをしたと一般的には理解されていますが、問題の本質から外れたものであると言わざると得ません。藤村氏がねつ造したことが問題ではなくて、発掘の過程に於いてねつ造することができる環境があったことが問題なのです。

 今回はたまたま、藤村氏が石器を埋めている映像がありました。しかし、他にも知られていないところで、遺跡がねつ造されているかもしれないことは否定できません。本当の解決策は、ねつ造できない発掘システムを開発し、今後はそのシステムを活用して発掘を行っていくことです。

 科学的な証明というものは、誰がやっても同じ結果を出すことができるという条件においてのみ可能です。そして、発掘作業も例外ではありません。きちんとした手順が確立されていれば、疑いようのない発掘結果を得ることも可能です。その手間を放棄しては、学問は成立しません。

 現在のような状況では、あらゆる発見や発掘は、その成果を疑われても否定できません。発掘者の人間性や倫理に期待するものではいけないのです。



有機農業(2000.10.22)

 農業の生産性を上げるため、「農業革命」と称して、人類は生産性が倍になる作物を開発し、普及させてきました。しかし、そのために化学肥料を使い、農薬を使い始めました。

 化学肥料は土地本来が持つ肥沃さを失わせ、農薬は、土地本来が持つ生物の多様性を失わせました。

 自然は人類に、「肥沃な土地」「水」「多様な生物」を与えてくれました。その恩恵のおかげで、過去一万年以上に渡って、人類は農業を営んでくることができました。

 今の農法は、50年以上は持たないものとなっています。日本においても、田の土壌は、本来30cm以上あるものでした。それが化学肥料と農薬を使うようになってからは、20cm以下になっています。

 このままの状態では、農業は続けていくことはできません。化学肥料と農薬を使い続けるということは、私たちの体を蝕みながら、50年後の農業危機をもたらすものに他なりません。

 一日も早く農業経営者がこのことに気づき、有機農業、あと一万年続けていける農業に戻らなければなりません。大量生産された単一種子をを使わずに、それぞれの土地に根付いて育成されてきた種子を後世に残していってほしいと願います。



凶悪犯罪の背景(2000.10.10)

 青少年の心の荒廃が社会間題化して、もう数十年がすぎようとしています。その間、事態はますますエスカレートしてきました。今や当時の心が荒廃した青少年が、そのままの状態で大人の仲間入りをしてしまっています。そして、今の青少年と一緒になって理解を超えた現象(犯罪)を引き起こしています。

 学校教育の現場では、「生きる力の教育」とか「ゆとりの学習」などの一見もっともらしい対策が講じられようとしてはいますが、そんなことで解決するほど簡単な問題ではありません。

 問題の根源は、社会全体に渡る価値観の崩壊にあります。何が一番大切なのか、何が最も尊重されるべきことなのかという、子供から思春期に抱く普遍性のある潜在的問いに対しての統一見解を今の社会は持っていません。例えば、30年前の日本では、弱い者を助けること、人の役に立つことば、東大に入ることやオリンビックで金メダルを取ることより素晴らしいことであるという評価を、宗教や哲学とは別に親も先生も、少なくとも建前としては押しなべて持っていました。そしてそれが「一番大切なことは」という子供の問いに対する社会の統一見解でした。私たちの築き上げてきた現代社会は、結果としてそれを否定したのであり、ここに問題の根源があります。

 個人の成功や勝利が、他人を助ける行為よりも評価されるとしたら、子供はそれに走ります。手段を選ばずそれを求めるでしょう。そして、それに失敗すれば、人格そのものを否定されたように感じます。自己否定、疎外感が犯罪に走る根底にはあります。

 現代の日本社会の価値観には人と人との対等な関係は存在しません。ただ強者と弱者の支配関係があるだけです。それはどちらにとっても不幸なことなのですが、人はなかなかそれに気づきません。



省エネ(2000.9.23)

 日本は石油危機を経験したことから、省エネが最も進んでいる国と言われています。特に産業界では省エネが進み、企業単位の取り組みは限界に近づきつつあります。それでも、ISO14000シリーズの取得などに努力し、最近まで注目されていなかった、事務系においても昼休みの消灯などが推進されています。

 しかし、今問題になっている家庭での取り組みは、遅々として進みません。無駄な電力使用を減すために、こまめにスイッチを消すなどが奨励され、待機電力の削減が叫ばれていますが、冷蔵庫など、どうしようもないものもあります。また蛍光灯などは、本当にこまめに消した方がよいかどうかも意見が分かれています。

 こまめに消すことによって意識を高めるのが重要であるという意見と、トイレや玄関の電灯と違って蛍光灯はこまめに付けたリ消したりしていると寿命が縮まるという意見があります。またパソコンなども、起動時に大量に電力を消費するため、つけっぱなしが良いという意見もあります。このように意見が分かれるのは、使わずにつけている時間の長さによって結果が違ってくることから起こっています。

 しかし、それより何より、最もエネルギーを消費し、二酸化炭素を消費している自動車が取り上げられないのが問題です。炭素税の導入が検討されてはいますが、なかなか実行されません。それは、戦後日本の輸出やそれに伴う高度成長を支えてきた自動車産業に対して意見を述べることができない構造があるからです。今日本で問題にされなければならないのは、自動車の使用を減らす努力です。

 さらに、年間1万人以上が自動車の犠牲になっていることも忘れてはなりません。



今の環境問題とは(2000.9.6)

 将来の世代に豊かな地球を残すためには何が必要でしょうか。この問題は、個々に語られることが多いので、全体像をつかむことができるように整理してみました。

 世界中の人が取り組まなければならない問題は次の4点です。

1.エネルギーの消費縮小
2.水不足の解決
3.生物の多様性の保存
4.知識と資源の適切な配分

 1については、エネルギーの大量消費による室内汚染、大気汚染、酸性雨、温暖化などが進んでおり、エネルギーを石炭→石油→天然ガス→太陽光、バイオマス燃料、リサイクル燃料へと変換しなければなりません。

 2については、人口増加による水質汚染のため水不足が深刻化しており、人間のために水を使えば、環境破壊につながるという矛盾に直面しています。地域単位で宇宙ステーションの方式を採用し、水循環を確保しなければなりません。

 3については、生物多様性条約などによる取り組みがありますが、地球サミットの時の熱気はすっかり醒めているようです。しかし、生物多様性の保存のための取り組みは常に必要とされています。

 4については、飢餓・栄養不足と、その対極の栄養過剰摂取による肥満・糖尿病・心臓病があります。また温暖化により感染症が増大しています。国などの枠組みがあるために、ワクチンなどの医療技術は一部の地域が独占し、適切な配分がなされていません。

 新しい社会に向かうための決断を今すぐにでもしなければならないし、決断のやり直しはできません。石炭火電のように石炭の利用を拡大するための投資をしたら取り返しはつきません。

 科学者・技術者による政治的な影響力を高め、科学者が政治のことを考える必要があります。また、全ての人が、この問題が存在し、解決する方向に進まなければならないことを理解しなければなりません。



自殺者3万3000人(2000.8.18)

 1999年1年間の自殺者が33000人を超え、過去最高、特に中高年が目立つそうです。自殺を考えたことのある人はたくさんいると思います。しかし、どうして実行するのでしょう。

 それは1つに、やり直しがきかないということがあります。失敗やケガならやってしまったあとで、挽回することができます。ところが、一度縄に首を突っ込んで、踏み台をけ飛ばしたあとで”しまった”と思っても、元には戻ることができません。

 しかし、そんなことよりも大切なのは、本来人間に存在する”想像する”という能力を忘れてしまっていることです。成功体験を想像することによって、より成功に近づくこともできるし、どん底の中でも今よりひどくなることはないと想像して、がんばることもできます。想像することにより、自分自身がどういう人間で、どういう価値を持っているかを理解することができるはずです。

 自殺する人も含めて、今生きている日本人の多くは、夢を描くことを忘れています。目標なき多忙に目を奪われ、本来なりたい自分や将来への望みを想像することを忘れています。そして、そんな状態のまま生活環境が悪化すると、自殺や家出にのみ心を奪われて、後戻りができなくなってしまうのです。

 死ぬのはいつでもできるし、避けようと思ってもいつかは死んで何もなくなってしまうということすら、忘れてしまっています。仕事がなくなっても、病気になっても、人の価値は変わらないということを思い出してほしいものです。



味覚障害(2000.8.7)

 今日は立秋、しかし、暑い日が続きます。

 そんな日々の中で、朝食抜き、昼食はファストフード、夕食はコンビニ弁当、合間に菓子類、好きなものだけ食べていると、ものを食べても味がしなくなる=味覚障害に なります。

 また、加工食品に頼っていると、自分で味付けをすることを忘れ、味音痴になってしまいます。

 味覚障害になると、味の濃いものを好むようになります。すると、塩分や糖分を取りすぎて、年齢に関係なく高血圧糖尿病になります。

 味覚障害は、舌の表面の「味蕾」という器官の働きが落ちてくることによって起こります。

 「味蕾」を作っている細胞は、皮膚と同じように3〜4週間で再生します。再生には、ミネラルの1つである亜鉛が必要です。

 つまり、亜鉛が不足してくると、味覚障害になるのです。

 ダイエットのしすぎや、同じものばかりの食生活では亜鉛が不足します。

 また、食品添加物の中には亜鉛の吸収を妨げるものもあるので、食品添加物の多い食品も避けなければなりません。亜鉛の不足で毎年14万人もの味覚障害の人が出ています。暑いときこそ、食生活に工夫をしましょう。



新しい時代のマナー(2000.7.21)

 マナーのマニュアルはたくさんあります。そして、最近までは、それらの応用で社会生活を営むことができていました。つまり、経験・勘・度胸・出たとこ勝負で、なんとか仕事をこなせました。しかし、ここ2,3年で”平成維新”と呼ばれるほど状況は変わりつつあります。

 通常仕事は次の4つで構成されています。

  1. 日常分担業務
  2. 上司・先輩の補佐
  3. 後輩の指導
  4. チームワークづくり

 このうち、1以外は経験・勘・度胸・出たとこ勝負が役に立たなくなりつつあります。

 例えば、上司・先輩には補佐しきれない人が職場を去るようになり、後輩には情報処理能力に優れた人が増えてきました。

 また、職場での環境や地位のため、足を踏まれて「痛い」と言えない人が多くいました。しかし、「痛い」と言える環境づくりが義務化つつあります。

 このような新しい時代には努力が必要であり、他人に認められることを渇望するという人が本来持つ気持ちを理解し、威張らず、気取らず、卑屈にならず、良い聞き手となることが求められます。

 そして、自己中心的人間ではなく、本当に大事にしなければならないものを考えることができる人間が、求められつつあります。

 そういう人は創造型、自立型、研究型であり、地位、名誉、学歴、財産を得るための努力ではなく、なりたい自分になるための努力=自己啓発を行っています。

 反対に、そうしなければ新しい時代のマナーが身に付かず、社会生活を営むこと自体が困難となる原因になるでしょう。



地方分権(2000.7.6)

 昨年、地方分権推進法案が可決され、地方分権は進むことが予想されますが、今回の総選挙の結果からも、地方分権を推進する必要性が強く感じられました。

 今回の選挙では、都市部において野党が、地方において与党が支持されたことが、特徴として挙げられます。そして、都市部においては財政状況や政治姿勢などが判断材料とされたのに対し、地方においては、産業といえば公共投資くらいしかないため、現在の公共事業中心の景気浮揚政策が歓迎されるという形となっています。

 つまり、地方分権が進んでいないため、地方においては国全体のことや、将来のことを投票の判断材料にすることができず、目先の利益を追求しているという親方日の丸の構図があります。

 地方においてこういう判断をするのは、自分で自分の首を絞めているようなものです。というのは、公共投資中心の生活を選択すると言うことは、職業選択の幅を狭め、人材の地方離れを助長するからです。

 地方に自主性、独自性がないため、仕事に魅力がなく、人材が移動しない。職種を変えることも住所を変えることも難しいので、人材が固定化し、減少する。この悪循環を断ち切り、選挙においても自主的に判断し、投票する住民を育てるためには、地方分権を積極的に進めなければなりません。


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