緑の砂漠対策


 スギやヒノキの人工林内を歩けば「緑の砂漠」を実感できる。昼でも薄暗く生命の気配は乏しい。それでも時折イノシシが土を掘った跡が目につく。奥山を追われ、危険を冒して山里近くに餌を求めて来たのだろう。

 絶妙のバランスで災害から人間を守り続けた自然林を伐採し、地質や地形を無視した植林による山腹崩壊現場は随所に見られる光景だ。

 土砂災害防除の目的で無数の砂防ダムが建設されていく。春先になればスギ花粉症が国民生活に深刻な影響を及ぼすだろう。それでも、林道は延び続ける。手入れされないスギ林のすぐ横に新たな植林地が造られていく。この現実には驚き呆れるばかりだ。

 まずは、急傾斜地や谷筋の人工林を自然植生に蘇らせることだ。次に、人工林によって分断された動植物の生息域を復元できないだろうか。スギ、ヒノキの人工造林、鳥獣被害対策、土砂災害対策に使われている予算を、根本的対策にシフトすることが必要だ。 大西


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