山とおすすめの秘湯の温泉宿シリーズ その3

大船山と黒川温泉「山の湯新明館」


 季節外れの台風の直撃を受けて、今回は山より温泉を楽しもうと日曜の朝早く出発した。当然フェリーは欠航で瀬戸大橋を渡って高速道路を走った。四国を出る時は晴れていた天気も台風に近づくにつれて風雨も激しくなり、黒川温泉に着いたのは5時を過ぎていた。

 黒川温泉は今でこそ全国的に有名になったが、私が初めて訪問した時は本当に鄙びた田舎の温泉で、観光客の姿は少なかった。その時に入った共同風呂の記憶は今も鮮明に残っている。

 その黒川温泉を今の姿に発展させてきたのが「新明館」の後藤哲也氏である。詳しくはすでにいろんな雑誌類で紹介されているので省くが、今回幸運にもその後藤氏と露天風呂の入口にあるいろり端で一時間程話ができた。

 何十年と洞窟風呂も含めて全ての露天風呂を夜中まで一人で清掃しているそうだ。氏の温泉宿にかける情熱を感じた。

 考え方は旅館の主というよりも「経営者」であり、「経営コンサルタント」である。

 最近も別府温泉の旅館組合に経営指導に行ったり、鳥取県知事からアドバイスをしてほしいと頼まれたり、またテーマパークでは一人勝ちしているディズニーランドの職員を研修を兼ねて宿泊させている。

 その温泉の湯量は豊富でどの風呂も素晴らしい。一人で数年も掛けて掘ったという洞窟風呂は特記すべきもので癒されに行く温泉としては最高だ。姉妹館の「山みずき」もお勧めでどちらに泊まっても其々の風呂は無料で入れる。チェックアウトしても領収書をフロントで見せるとその日はいつでも入れるのもちょっと得をした気分にさせるサービスである。

 露天風呂など温泉宿の風呂全般のアドバイスをしており、はげの湯「裕花」の風呂を是非一度見てほしいと薦められた。次回には訪問してみたい。また九州には「秘湯を守る会」の会員宿が少なく、実際には適した宿も多く後藤氏がたずねて加盟を勧めている。私が「鹿児島の栗野岳温泉の南州館など当然入ってほしい一軒宿ですね。」と話すと一番に加盟を勧めた宿らしく驚いていた。

 翌朝は快晴になったが時間の制約があり、大船山はあきらめて平治岳に登った。途中の原生林が素晴らしく、いつのまにか尾根に登った感じで、そこから見る山の景色は感動ものであった。満開のミヤマキリシマが全山を一面ピンク色に染めており、グラビア写真そのものであった。台風一過、眼下に久住山から星生山が鮮明に見え、久しぶりに花の山を味わった。来年もゆっくり時間をかけて登りたいと思う素晴らしい山行であった。(西條)
( ※今回は山・温泉共に素晴らしかったが秘湯の温泉宿ではありません。)


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