クマ対策に活発な論議を

1999.8


 四国のクマが絶滅寸前だという。本紙の記事によれば、せっかく生息調査が行われたにもかかわらず、徳島県は有効な対策を打ち出していない。法整備、人員、予算に問題があると推察される。

 積極的に人に危害を加えないといわれるクマだが、人間側の不注意により不幸な事故も起こる。仮に税金を投入し保護策が効を奏したところでメリットはないかもしれない。

 森の王者ツキノワグマの生息には、ブナ林に代表される豊かな自然が不可欠である。クマを保護することは、森の生態系すべてを守ることといえる。

 急峻な地形と地滑り地帯をかかえる徳島県にとって、その保水力は守り神となる。安定した水量が流域を潤し、海に注がれる栄養価の高い水は、海洋生物の命も育む。漁業にとっても森の恵みは重要だ。自然林は直接市場価値を生み出さないが、実は、多大な恩恵を人にもたらす。ただ極端にクマが減少している実態からみて現在の自然林はあまりにも少ない。

 人の暮らしの基盤を支える道路や橋を建設し維持する公共事業が成り立つなら自然林を再生することもできるはずだ。林業で生計をたてる人々はもちろん専門家の意見も交え論議されるべきだ。例えば、植林事業への補助金制度を改め、自然林育成の道を探ることはできないだろうか。大西

「阿波あすなろ山の会」
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