印象の山

折目


 山に登り始めていつの間にか20年以上が経ちました。たくさん登った山の中で一番印象に残っている山を一つだけあげるのは非常に困難ですが、美しかった、良かったというよりも、大変だった、悲惨だったという山の方が後々鮮明な印象として残っているのも事実のようです。

 その中で強いて一つあげるとすれば、大学1年の時始めて冬山を経験した大山〜烏ガ丸でしょうか。時期は11月の下旬でしたが、当時山の知識があまりなかった私は、11月の大山に雪が降るなどとは思ってもいませんでした。

 神戸から京都に行き山陰線に乗り換え大山口に着いた頃は冷たい雨が降っていました。バスで登山口の大山寺に着いた頃には雨が雪に変わり、なぜか心が浮き浮きしていたのを覚えています。

 ところが雪はだんだん激しくなり、完全な吹雪となってしまいました。充分な装備をしていなかった私は完全なパニック状態で、手も凍傷寸前、かろうじて死ぬ思いでやっと山小屋にたどり着きました。

 翌日は打って変わって晴天で、頂上から見た日本海の眺めは本当に感動的でしたが、無事鏡ガ成に下山した時は、もう冬山など二度と行かないぞと固く心に誓ったものでした。

 あれから幾年かの歳月が流れ、いつの間にか山が一番美しいのは冬山だと思えるようになり、あれほど痛い目にあった大山も私の最も好きな山の一つになりました。

 今から振り返れば本当に若気の至りで、愚かな山行だったと深く反省していますが、それでも弱音を吐かず最後まで歩き通した根性と負けん気だけは唯一誇れるところかもしれません。

 今でも山に登り続けている、原動力かもしれません。  折目


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