槍ヶ岳

2001.7.18〜7.21


メンバー:L天野、永井、古田

 入ったかどうかもわからぬ梅雨があけた後の三連休を利用して、避暑に行こうと計画した。

 初めは久米夫婦と一緒に南アルプスの赤石岳を計画したが、天野の都合で槍ヶ岳に変更。というのは、天野が職場関係の小冊子に山の紹介を書くことになって、一般的によく知られた山、地域にしようということで上高地から槍ヶ岳の方がよかろうと思って変更した。とはいえ人気のある地域なので連休にはどっと押し寄せるだろうから、手前に一日休みを取った。

 18日夜9時松茂体育館を出発。高速道に乗る。淡路、垂水、三木を過ぎ吹田から名神高速へ、長良川、木曽川を横切って一宮西から東海北陸自動車道へ。飛騨清見で降りて高山方面に向かう。まだ暗い。

 道の駅で1時間仮眠して高山に向かう。高山に入って国道近くに銀河高原ビールの工場があるが、帰りにはきっと寄ろうと決意して通り過ぎた。この辺りの家は黒い柱と白い漆喰壁、黒い瓦でできたすっきりしたものが多く見られる。

 田園風景から市街を通ってまた田園へ、段々乗鞍岳方面の山々が見えてきた。平湯温泉から安房トンネルを抜けて上高地入り口にでる。普通車は上高地まで入れぬので、やや松本方面に下った沢渡へ。岩見平駐車場にP(1日\500)。

 バスで上高地に入る。バスは次々と登山者、観光客を運んできたが、バスターミナルは空いていた。連休前に一足早く来た甲斐があった。

 有料トイレ(寸志\100)で用を足し、準備運動をしてスタート。(7/19,7:00)しばらくゆくと、例の河童橋が吊り尾根を背景に梓川をまたぐ。人が少ないので写真を撮る。唐松林の中を明神へ向かうと大木の林は涼しい日陰をつくって歩きやすい。下界は相変わらず30度以上になっているらしいが、ここは緑陰に囲まれて涼しい。

 梓川に沿う道を明神館まで50分。次は徳沢に向かう。左には明神岳が急峻に聳える。シラビソ、トウヒ、クマ笹に囲まれた欧風の山荘徳沢園に着く。小さな清流には鴨が泳ぎ、山荘前の草原はキャンプ場。さらに川沿いの水平道を行くと川の二股の横尾に着く。ここから涸沢方面と槍沢方面が分かれる。水平道はここまで。トイレはここまで全て水洗で紙の備えも万全(10:00)。

 さて槍沢を登りにかかる。しばらくは緩い登りで、沢の清流を真横に見ながら行く。清流が涼感を盛り上げ花崗岩の砂が白い。段々傾斜がきつくなった所で槍沢ロッヂに着く。この辺はまだ背の高い木々に囲まれて陰のなかであるが、更に登るとダケカンバが出現して標高が高くなったことが目に見える。反対に高い木々は姿を消す。

 しばらく行くとババ平キャンプ場に出る。赤沢岩小屋もある。標高2000mを越えて日陰がすくなくなってきたが、気温は下界より12度位低く、沢には雪渓が現れて空気を冷やすので暑くはない。

 雪渓の上をしばらく歩くので足元の崩壊には気をつける。雪解け水の音が谷に響く。上が大きく開けた谷は真っ青空を見せてくれる。大曲りから上は更に傾斜がきつくなるが、お花畑がひろがって、重くなりそうな足取りを軽くさせる。この辺までくると涸れた沢の上に槍ヶ岳の三角形が見えるはずが、頂上あたりに雲がかかって見せてくれない。

 殺生ヒュッテが頭上に近づいたころ急に雨が降り出す。急いで合羽を着て右上の東鎌尾根上のヒュッテ大槍を目指すが、頂上に近いところから雷鳴が響く。これはいかんと3人の間隔を広くとり低姿勢で最後の急傾斜をゆっくり登る。ここはお花畑であるが、それどころでない。いつ雷がおそってくるかとおののきながら、やっと小屋に着く。(16:00)

 小屋は2800mの高みに、風雪に耐える石積みにかこまれて、こじんまりと建っている。寒さに震えながら飛び込んだ我々を待っていたのは、なんとストーブだった。下界では猛暑というのに、ここは涼しい。いや涼し過ぎる。ありがたい。

 おまけに主人夫婦が気さくな人たちで、小屋の中は清潔、感じよく、居心地がよかった。さらに食事が山小屋としては非常に旨かった。主人は腕のある職人とみえた。その主人の言うには、毎日夕方には雷雨となるので、明日はキレット越えは昼過ぎになると危ないので、南岳あたりで判断した方がよいという。そこで計画は変更して槍ヶ岳ピストンにした。

 翌朝日の出直後に小屋の外に出ると、大槍が眼前にどっしりと迫っている。しかし2,3枚写真をとっているうちにガスに覆われてしまった。朝食後東鎌尾根最後の1ピッチで槍ヶ岳山荘に着く。大槍は目の前だがまだガスってみえぬ。

 山荘前テラスでしばらく待つと風にガスがとばされて150mの槍が全容を見せた。このときとばかりとりつく。岩ばかりの山であるが見た目ほどにはきつくない。手がかり、足がかりはしっかりしている。15分で天辺、3180m。遮るものはない。

 東に見える常念岳は大きな三角形を成して、ひときわ目立つ。遠く立山、白馬、前穂高など北アルプスの真ん中からの贅沢な展望を満喫。山荘に下って祝杯の生ビールが旨い。(7/20,8:30)

 下りは槍沢のお花畑の中を行く。背の低い小さな可憐な花たちは一斉に訪れた遅いそして短い春を謳歌する。11月から5月まで半年以上雪に覆われた地表でじっとがまんして、わずかな土の栄養を採って美しい花と緑を見せてくれているようで、いじらしい。ここからふりかえると、カール地形のU字谷上部の円弧の上に、尖った槍が突き出て、一幅の絵になる。よくある写真の構図である。

 殺生ヒュッテの横を過ぎてからは登りと同じ行程を上高地まで戻った。(16:30)途中登りの人と数百人もすれちがったので、やはり1日早く来たのがよかった。そういえば、ヒュッテ大槍の主人は今日からは満杯になるといっていた。

 バスで駐車場に戻ってからは車で乗鞍高原の湯煙館にゆき、硫黄の湯で2日間の疲れを癒した。予定より1日早く降りたので宿を松本市内のビジネスホテルにとって、下山後の祝杯をたのしんだ。

 翌日はまた乗鞍岳へ向かうが、車が多すぎて頂上方面はやめて、休暇村に近い牛留池を周遊して、安房トンネルから平湯温泉に行き、神の湯につかった。山際にあり、木々と岩に囲まれた素朴な湯だった。

平湯バスターミナルで飛騨名産飛騨牛の朴葉味噌焼きを食って帰路についた。途中高山の銀河高原ビールには寄れなかったのが心残りであったが、総じて避暑とリフレッシュは充分にできた。 天野


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