西三子山

2000.4.1


メンハ゛ー:天野 小林 西條 佐々木 高川 古田

 高圧線保守のための作業道らしい、手入れの行き届いたジグザグ道に取り付く。

 南斜面を直射する陽光を真横に浴びて汗ばみ始めたころ急登は終わり、水平の小径に踏入る。樹間をわたる風が光る。春の汗は心地よい。苔の絨毯を踏む感触を楽しみながら延々と続く道を歩く。後ろで「苔がかわいそう」というつぶやき。

 西三子の頂が姿を現す。東斜面上部の杉林から画然と仕切られた自然林からなる頂である。枯れ枝越しに見える三角錐の頂上は、歩くにしたがい少しずつ表情を変えていくが、姿の佳さは変わらない。

 福寿草を求めて北斜面に回り込むが、花はぽつぽつ。薄いブッシュを漕いで尾根道に戻る。岩が分厚く苔を纏い、絵のような情景が連続する。

 程なく頂上。岩と樹が日本庭園の趣を醸し出す。頂上からの眺望は絶佳。「ここから見る雲早はええなぁー。こんなにきれいかったんか」と感嘆の声が。

 東側の尾根に福寿草の群落があるとのことで、岩塊の尾根道を下る。長い長い下りにいい加減嫌気がさし、‘もう引き返そうや、こんなに下って花がなかったら誰が責任とるん?’と毒づき始めたころに爛漫の福寿草に出会う。そこここに乱れ咲く黄色い金属片のような花弁にてんでに顔を近づけてみる。目を凝らせば下萌えの幼い芽吹きも見える。踏みつけないように座を占め、宴会の始まり。

 梢を揺らす春の微風。薄青く霞む重畳たる山並み。安くても美酒と変ずる山上の酒。心身は暖かく解きほぐされ、陶然の境地に浸りて…、などとほとんど美文調の気分を暫し楽しんでから、思いを残しながら天然の花園を後にする。

 林道が造成され、荒っぽく表土が剥き出しになった光景を前に立ち止まる。往路で「以前に来た時には、こんなのはなかったのに」と慨嘆したところである。この林道造成にどんな必然があったかは知る由もないが、昨今の自然破壊への怒りと公共事業に対する不信感からか、メンバーの林道を見つめる目は厳しい。

 苔の小径をのんびり歩き、ジグザグ道を快調に下る。沢音が聞こえ始めたと思う間もなく、登山口に降り立つ。

 西條シェフのタラの芽天ぷらが供され、この日2度目の宴会で盛り上がる。

 春の日の、暖かく美味しい山行であった。高川

西三子の地図
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