明神岳・三ツ頭

2000.1.29


 石段を登りきり、急斜面を赤テープに導かれよじ登る。目の前の岩壁に怖れをなしたから、右に捲き細尾根に取り付いた。だが、険しすぎて高度は稼げない。女性陣から、恐怖感を訴える言葉が出始めた。志気が低下すれば、危険もそれだけ増大する。この山を女人禁制とした古人の意図が推し量れた。

 東面からは無理だ。一旦、神社まで戻った我々は、もう一つの可能性を試すことにした。谷沿いの植林地に登路を見いだし、北側のコルに到達しようというのだ。先週、下降を断念した崖を下りきった地点にあたる。

 里道から、斜面に這い上がる。青木の藪をくぐり抜け、スギの倒木を踏み越えて、地形上の弱点を攻め続ける。岩を避けるうちに、一度左岸に渡った谷を上流部で右岸に戻った。

 これから先は一直線であってほしいと願いつつ進む。頭上の光明は青い空に変わった。

 正解だった。明神岳最高地点(のち三ツ頭と判明)まで標高差50M。まだ形勢逆転とはいかない。所々岩が露出する斜面は、おそろしく急だ。手がかりとなる木は、ふんだんにあるが、雪と土と落葉が体をずるずる後退させる。あきらめかけたものの、アイゼンを装着したら、体が安定した。頼もしい道連れ!心理的効果も大きい。

 一息で憧れの頂上だった。確認できた人工物は、一本のコンクリート杭のみ。付近に赤テープも無い。これまで、登山者の山ではなかったようだ。

 故郷の埋もれた山に出会えた悦びに浸る。敬意をはらうべき手強い山であった。大西

「阿波あすなろ山の会」
[戻る]