一の森

2000.9.17〜9.18


 阿波あすなろ山の会ゆずりは特別取材班[内藤(克)・(翔)・(健)]は九月十七日、会員の加賀城さんが常住しているという一の森ヒュッテに突然押し掛け、取材を試みました。
 突然の訪問であるにも係わらず加賀城さんは快く出迎えてくれ、現在の状況やそれに至った経緯、今後の予定などを話してくれた上、歓待してくれました。

 木屋平村では一の森ヒュッテの常住者がいなくなって以来、夫婦で半年間住み込んで営業してくれる人を捜していましたが、シーズン入りしても見つからず、夫婦でなくてもよいという条件を出して、加賀城さんを迎え入れたようです。
 加賀城さんはちょうど遍路途中であり、また今年中に、自転車で日本縦断の旅を行う予定でもあったのですが、村の強い希望があり、引き受けたそうです。

 ヒュッテでは一歩外へ出ると全くの静寂です。夜は冷気が体を包み込み、山上にいることを実感させてくれます。
 しかし、室内は既にストーブが炊かれ、テレビも三チャンネルほど映り快適です。テレビを見ながら雑談するも良し、ストーブの脇で談笑するも良し、楽しい山小屋の一夜が提供されています。

 また、ここからの日の出がすばらしいことは、昔から山の解説書等に記されていることからも明らかです。 加賀城さんの説明によると、ヒュッテは北海道の釧路とほぼ同じ気温だそうで、特別取材班が泊まった九月十八日も、明け方の気温は七度でした。
 さらに、一の森ヒュッテは紅葉などのシーズンでも他の山小屋のように満員になることはなく、1人ずつベッドに寝ることができるそうです。
 特に平日に泊まると貸し切り状態が多く、加賀城さんの気配りも合わせて、マイペースで快適な夜が過ごせること請け合いです

 営業を引き受け、七月にヒュッテに移り住んでからすぐ、古くなった設備に悩まされたそうです。
 ヒュッテの水はポンプで汲み上げられ、凍結防止のため小屋の下のタンクに溜められています。当初の説明では水がたまるとポンプは自動的に止まるということで した。ところが、 実際に使って みると、貯水槽が満杯になってもモーターが止まらず、地下室が水浸しとなったそうです。そこで、毎日水位を点検し、手動で水を入れるようにしているそうです。
 また水道は、加圧ポンプで2k位の圧をかけて使用するようになっています。当初の説明では一定の圧になると自動的にポンプが止まるという説明でした。
 ところが、夜中におかしな音がするので加賀城さんが点検してみると、最高5kのタンクに既に4.5kの圧がかかっており、爆発寸前となっていました。以降は再三点検し、手動で2k位の圧を保つようにしているそうです。
 さらに、食糧貯蔵用の冷凍庫は扉がきちんと閉まらず、霜のため機能しなくなるので、時々食料をビールなどの冷蔵ケースに移して、霜取りをする必要もあるそうです。
 このように、しばらく使われていなかったため使いにくくなった機器を、工夫して使いこなしているのは加賀城さんならではと言えるでしょう。

 三加茂に住んでいたときは、早朝トレーニングを欠かしたことがなかった加賀城さんですが、現在はどうしているのでしょう。
 朝は五時には起きているので、朝食を作る前に山道を走っているらしいのですが、朝露で足下が濡れるので、釣り用の磯靴を履いているそうです。
 また、悪天候の時は、室内トレーニングにも励まれているそうです。
 しかし、電話機に留守番電話や携帯電話の機能がないため、常に電話機の近くにいなければならないので大変です。
 1人で予約の受付なども行っているため、仕事のやり繰りに不便を強いられているようです。お手伝いという名目で、昼間ヒュッテでのんびりと電話番をするのも良いかもしれませんね。

 山行で加賀城さんの手料理のご相伴に預かったことのある方はご存じのとおり、料理の腕は一流であり、それを朝夕、食することができるチャンスでもあります。
 会員が宿泊すれば歓待間違いなく、特別待遇もあるかもしれません。
 事実、特別取材班が泊まったときは管理人用の風呂にも入れてもらい、酒の肴もお手製、すこぶる快適な一夜を過ごすことができました。紙上を借りてお礼申し上げます。

 村では常住者がいなくなってから、役場が予約電話を受け付けて営業していましたが、常住者がいないと建物等の傷みも激しく、予約のみでの営業が困難となっていたそうです。
 加賀城さんは来年、自転車での日本縦断などを計画しており、常住は今年十月末までの公算が大きいことから、村では引き続き営業してもらえる夫婦者を捜しているようです。
 ヒュッテの営業は料理ができるだけ、山に詳しいだけでは難しく、両方を兼ね備えていなければなりません。心当たり、若しくは自分がやってみようと思われる方は、加賀城さんに教えてあげてください。

一の森の地図
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