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三嶺(1893.4m)

1994.7.16



 これまで登った山の中で最も気にいっているのは? と聞かれたなら躊躇せずに応えよう。

「白髪ノ別れから観る、曙の光を吸い込んだ三嶺の雄姿。澄み切った青天を突く、まるで大理石を研磨した南アの鋭峰甲斐駒。そしてまだ観ぬマタギの里、東北はブナの白神」

 これからもせっせとピークを稼ぎ、印象深い山行も増えるだろうが、これらが僕の山恋のベースである。

 とりわけ先日行った三嶺には底無しの想い入れがあり、行くたび感動が積み重ねられてゆくようだ。

 コメツツジが残念ながら終わっていて、また来年まで待たなければならない悔しい思いをさせられた以外は、避暑になったし、快晴のお蔭もあって素晴らしい展望を得る事ができた。

 ササ原で座ったり寝転んだりしていると、暑い下界などへ帰らず、天然のクーラーを浴びながらこのままくつろいで居たい気分になって下りる元気が萎んでいくのだった。

 同行の2人の知人も「来て良かった」と喜んでくれ、仕掛け人の僕の苦労も報われた。

 丸石のかずら橋でアイスクリームを食べ、脇町から高速道路に乗った頃には、再び下界のむさくるしさに体がなじんでゆくのが感じられた。(尾野)