小林さんがいっしょだと、いつもは上天気なのにこの日は終に1日中晴れることがなかった。しかし登行欲はちっとも揺るがず、曇天といえども未知の魅力と新発見の可能性を覆すまでには至らなかった。
上りは途中ブッシュの個所があるものの、主稜線で明確な踏み跡に合流する。天辺は意外に広い。広葉樹が豊かなため雪をシャットアウトし、乾いた落葉のじゅうたんはふわふわで腰を下ろすと非常に居心地がよかった。
帰りは主稜線に見つけた路を辿ることにした。小林さんは不安を隠し切れない様子だったが、別行動をとる訳にもいかず僕の冒険に無理やりつき合ってもらう形になった。
そして一か八かのその路は、なんと登り口と100メートルと離れてない所へと導いてくれたのだった。色あせたテープも巻いてあり、気づいたときの驚嘆は、安堵と幸福の入り交じるそれであった。
この山はマイナーピークには違いないが、決してヤブ山なんかではない。もし好天ならくねくねと続く細尾根の突端に、湯桶丸の雄姿を望める好適地になり得るし、往復150分で行かれる軽ハイクのコースでもある。
そしてそうして石原山の真相を解明できたのは、今回登頂し、プラトニックマウンテンに終わらせなかったからであろうと思う。(尾野)